転生屋

 アンタは見ない顔だな。この辺りに来たのも初めて? そいつぁイイね、美味しいカモになってくれそうだ。……冗談だよ、んな渋い顔しなさんな。俺を選んでくれたのが何でかは知らねぇが、俺は清廉潔白、|運斤成風《うんきんせいふう》、責任をもってやりきることで|好評嘖嘖《こうひょうさくさく》なんだ。自分で言うなって? 宣伝のためだから謙遜なんてしちゃいられないのさ。
 で、ご依頼はなにかな。勇者が欲しい? アンタのとこも大変なんだな。最近はこの手の依頼が多いんだ。自分の世界の者でどうにかしようとは思わないのかい? ……あ~、わかったわかった、怒んなよ。別におちょくってるわけじゃねぇぜ。興味があっただけだ。そりゃ低リスクで簡単に手に入った方がいいよな。わかるぜ。
 んじゃまあ、サクッとやってくるな。この世に未練がなさそうで、それなりに体力があって、一般常識が通じて、役に立つかはともかく何かに秀でている人間……え? 二週間の猶予? いらねぇよンなもん。アンタには想像つかないだろうけど、案外そういうヤツはいるんだ。
 そうだ、アンタのとこには便利な回復手段はあるかい? ある、と。じゃあ一番お手頃な価格はこれな。安い? そりゃ良かった。たしかに頂戴したぜ。
 ……はい、これが依頼の品な。欠損してる? ちゃんと全部あるだろ。アンタの世界の回復手段で繋げば、アンタの世界に順応するよ。魚と一緒さ。急に世界を移したら、びっくりしちゃうからな。生きたままって方法もあるっちゃあるが、面倒なんだ。それにこっちの方がお手頃でちょっと愛着わくだろ。生き返らせてやった人間、なんて早々手に入らねぇぜ。
 おいおい、死神だなんて、人聞き悪いこと言うなぁ。俺は転生屋だよ。転居屋でも、転移屋でも、転世屋でもない。アンタもわかってここに来たんだろ?

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